住宅ローンを借り換えるメリット・デメリットは?適切なタイミングも
この記事では、住宅ローンの借り換えについて解説します。
住宅ローンの借り換えを行うことで、返済総額が減る場合があります。ただし、借り換えには費用がかかるので、総返済額が減るのかを事前にシミュレーションすることが重要です。
また、住宅ローンの借り換えはタイミングを見極めることをおすすめします。残りの返済期間が10年以上あるとき、借り換え前後の金利差が1%以上あるときなどは、借り換えのメリットが大きいといえるでしょう。
この記事では、住宅ローンを借り換えるメリット・デメリットも紹介します。
【この記事でわかること】
● 住宅ローンを借り換えるメリット
● 住宅ローンを借り換えるデメリット
● 住宅ローン借り換えのベストタイミング
そもそも住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、現在の住宅ローンを他の金融機関で新しいローンに組み替えることです。借り換えの主な目的は、金利が低いローンに切り替えることで返済総額を減らすことや、返済期間を短縮することにあります。
基本的な仕組みとしては、現行の住宅ローンを一括返済し、新たに借り入れたローンに対して支払いを続けることになります。
借り換えの際には、手数料や諸費用がかかるため、全体の費用を検討することが重要です。
住宅ローンを借り換えるメリット
ここでは、住宅ローンを借り換えるメリットについて解説します。
- 毎月の返済額・利息負担が軽減できる
- 返済期間が短縮できる
- 将来の金利上昇リスクの対策になる
- 保障内容が充実した保険に変更できる
順番に見ていきましょう。
毎月の返済額・利息負担が軽減できる
借り換えによって、現在よりも低い金利が適用されると、毎月の返済額が軽減され、総支払額も減少します。
特に、金利が高い時期に借りたローンを低金利のものに変更すると、大きな節約効果が期待できます。
返済期間が短縮できる
金利が下がると返済額も減少するため、期間を短縮することが可能です。
借り換え後も、現在と同じ返済額を維持することで、早期にローンの支払いが進み、予定よりも早くローンを完済できます。
返済期間が短縮されることで、利息の負担がさらに軽減され、長期間にわたるローンの重圧から早期に解放されるのは大きなメリットです。
将来の金利上昇リスクの対策になる
現在、変動金利でローンを組んでいる場合、将来的な金利上昇に備える必要があります。金利が上昇すると、毎月の返済額が増加し、家計に負担がかかるリスクが高まります。
2024年7月31日には、日銀が追加利上げを決定しました。日銀の黒田総裁は会見で、今後の金融政策について利上げ姿勢維持を示唆しています。
日銀の植田和男総裁は23日、衆参両院の閉会中審査に出席し、経済・物価が見通しに沿って推移すれば利上げする方針を繰り返し説明した。日銀は年内にも追加利上げするシナリオを維持するが、市場動向や政治情勢は変化しており、複雑な要素が絡んだ政策判断になる。 |
※引用:日銀、追加利上げへ複雑な判断 年内視野のシナリオ維持 – 日本経済新聞
今後の金利上昇リスクの対策になる点で、住宅ローンの借り換えは有用です。借り換えを通じて固定金利に切り替えることで、将来的な金利変動のリスクを回避し、返済額を一定に保つことが可能です。
保障内容が充実した保険に変更できる
借り換えを行う際、新たに借りる金融機関が提供する団信の内容が、現在のものより充実していることが多くあります。
団信は、ローン返済中に契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、残っている住宅ローンが保険によって全額返済される保険です。
保障内容が充実している保険に変更することで、病気や事故による予期せぬリスクから家族を守り、安心感を得られます。
住宅ローンを借り換えるデメリット
住宅ローンの借り換えを検討する場合、デメリットについても考慮する必要があります。
- 数十万円の諸費用がかかる
- 審査のために必要書類を揃える手間がかかる
- 借り換えの審査に通らないおそれがある
- 住宅ローン控除額が減少するケースがある
- 変動金利へ変更すると金利変動リスクが生じる
上記の5点について、順番に見ていきましょう。
数十万円の諸費用がかかる
住宅ローンを借り換える際には、新たに手数料や税金などの諸費用が発生します。
費用名 |
説明 |
費用相場 |
事務手数料 |
金融機関に支払う手数料 |
数万〜数十万円 |
抵当権設定費用 |
抵当権の移動に伴う登記費用 |
借入額の約0.4% |
司法書士報酬 |
登記手続きのために司法書士に支払う報酬 |
5〜10万円 |
保証料(必要な場合) |
金融機関が要求する場合に支払う保証料 |
借入額の約2% |
火災保険料(必要な場合) |
新たに火災保険に加入する場合の費用 |
数万円 |
印紙税 |
契約書に貼付する印紙の費用 |
数千〜数万円 |
諸費用の合計額は、30〜100万円程度です。金融機関により保証料や手数料が異なるので、事前に確認しておくのがおすすめです。
審査のために必要書類を揃える手間がかかる
住宅ローンの借り換えには、新たな金融機関で審査が行われます。そのため、申込時に多くの書類を提出することが必要です。
身分証明書や所得証明書、また現在の住宅ローンの返済状況がわかる書類など、用意するには手間がかかります。手続きの負担や、書類準備の負担などを考慮して、借り換えを行うかを選択するのがおすすめです。
借り換えの審査に通らないおそれがある
借り換え時には再度ローン審査が行われますが、通らないリスクもあります。
特に、前回の住宅ローン契約時よりも収入が減少している場合、審査が不利になる場合があります。また、クレジットカードや他のローンの滞納歴、健康状態の変化などがあると、審査に影響を与えやすいでしょう。
住宅ローン控除額が減少するケースがある
住宅ローンを借り換えると、住宅ローン控除の対象となる残高が減少する場合があります。控除の対象となる金額は、年末のローン残高に基づいて計算されるため、借り換え後に控除の額が減少するでしょう。
また、住宅ローン控除は最大で13年適用されますが、借り換えを行ってもその期間はリセットされないため、控除を最大限に活用できないことがあります。
変動金利へ変更すると金利変動リスクが生じる
借り換えによって、固定金利から変動金利へ変更する場合、将来的な金利上昇リスクが生じます。変動金利は金利が低い時期にはメリットが大きい一方、経済状況の変動により金利が上昇した場合、月々の返済額が増加するおそれがあります。
固定金利に比べて変動金利は返済計画が不安定になりやすいので、将来的なリスクを考慮に入れておくのがおすすめです。
住宅ローン借り換えのベストタイミング
住宅ローンを借り換えるベストタイミングは、主に以下の3つです。
- 残りの返済期間が10年以上あるとき
- 住宅ローン残高が1,000万円以上あるとき
- 借り換え前後の金利差が1%以上あるとき
順番に見ていきましょう。
残りの返済期間が10年以上あるとき
住宅ローンを借り換える際、諸費用や手続きに伴うコストが発生します。返済期間が短すぎると借り換えによる節約額が諸費用を上回らない場合があります。
残りの返済期間が10年以上あると、金利差によって節約できる利息の額が大きくなり、借り換えによるメリットが増します。
住宅ローン残高が1,000万円以上あるとき
借り換えによるメリットが最大化されるのは、ローン残高が多い場合です。
一般的に、残高が1,000万円以上ある場合は、金利差によって節約できる利息の額が大きくなるため、借り換えのコストを回収しやすくなります。
逆に、残高が少ない場合は、諸費用と節約額のバランスが取りにくく、借り換えのメリットが小さくなることがあります。
借り換え前後の金利差が1%以上あるとき
借り換えの効果を最大化するには、現在の金利と借り換え後の金利に1%以上の差があることが目安とされています。
金利差が小さい場合は、手数料や諸費用が節約額を上回り、借り換えの意味がなくなってしまうことがあります。1%以上の金利差がある場合、支払う利息が大幅に減り、借り換えを行うメリットが大きいでしょう。
住宅ローンの借り換え効果をシミュレーション
ここでは、住宅ローンの借り換え効果をシミュレーションしました。
シミュレーションに伴い、条件を以下のとおり設定します。
【条件】 ● ローン残高:2,000万円 ● 残りの返済期間:25年 ● 返済方法:元利均等返済 ● ボーナス払い:なし ● 借り換え前の金利:固定金利1.8% ● 借り換え後の金利:固定金利1.1% ● 借り換えの諸費用:100万円 |
シミュレーション結果は、以下の表にまとめました。この表から、総返済額は約400万円減少していることがわかります。
|
借り換え前 |
借り換え後 |
借り換え効果 |
毎月返済額 |
8万2,838円 |
7万6,284円 |
6,554円 |
総返済額 |
2,485万1,400円 |
2,288万5,200円 |
196万6,200円 |
諸費用を考慮した総支払額 |
2,485万1,400円 |
2,388万5,200円 |
96万6,200円 |
※参考:ローン借り換えシミュレーション|お取引シミュレーション|一般社団法人 全国銀行協会
上記の条件でシミュレーションを行った結果、諸費用を考慮しても約100万円節約できることがわかりました。実際にどれだけの費用が節約できるのかは、自分にあった条件でシミュレーションするのがおすすめです。
住宅ローン借り換えの前に知っておきたいポイント
ここからは、住宅ローンの借り換え前に知っておきたいポイントについて解説します。
- 金融機関に金利引き下げを交渉することが可能
- 状況によっては借り換えができないケースがある
- 借り換え前より借入期間を長くできる金融機関もある
住宅ローンの借り換えは、金利を下げて返済額を減らす大きなチャンスですが、慎重に検討しなければなりません。
金融機関に金利引き下げを交渉することが可能
借り換えを考える前に、現在の金融機関に対して金利の引き下げ交渉を行うことが可能です。
借り換えを計画していることを伝えることで、金融機関が契約を維持するために金利引き下げを提示してくれることがあります。
市場の競争が激化している状況では、金融機関が競合と同等の金利を提供する場合があります。借り換えに踏み切る前に、まずは現在の金融機関に相談し、金利引き下げ交渉を試みることが重要です。
状況によっては借り換えができないケースがある
借り換えができない、もしくは条件が厳しくなる場合があることを覚えておきましょう。
住宅ローンを借りる際に、その物件が担保として提供されます。物件の価値が大幅に下落している場合、担保価値が不足しているという金融機関の判断がなされ、借り換えが難しくなることがあります。特に、築年数が古い物件や、地価が下がっている地域の物件は注意が必要です。
借り換え審査では、申請者の現在の収入状況が重要な要素となります。ローン契約時よりも収入が減少している場合、審査が通りにくくなることがあります。
借り換え前より借入期間を長くできる金融機関もある
借り換えを行う際、金融機関によっては現在の借入期間よりも長く設定できる場合があります。
借入期間を延長すると、月々の返済額が減少します。家計に余裕を持たせたい場合や、将来の収入減少に備えたい場合には有効な手段です。
ただし、借入期間を延ばすことで月々の返済額は減少しますが、期間が長くなる分だけ支払う利息が増加します。したがって、全体の返済額が増えてしまうおそれがあります。
それぞれのメリットとデメリットを吟味して検討することが重要です。
住宅ローンの借り換えに関するよくある質問
ここでは、住宅ローンの借り換えに関するよくある質問を紹介します。
- 住宅ローンの借り換えでよくある失敗事例は?
- 住宅ローンの借り換えは同じ銀行でもできる?
- 住宅ローンの借り換えはいつから可能?
疑問の解消にお役立てください。
住宅ローンの借り換えでよくある失敗事例は?
住宅ローンの借り換えでよくある失敗事例として、諸費用を考慮せずに借り換えを行うことや、金利上昇リスクを軽視することが挙げられます。
借り換えには手数料、登記費用、保証料など数十万円の諸費用が発生します。諸費用を計算に入れず、単純に月々の返済額が減ることに惹かれて借り換えを行うと、結果的に総返済額が高くなる場合があるため注意が必要です。
特に、固定金利から変動金利への借り換えを行う際に、将来の金利上昇リスクを十分に考慮せずに借り換えを決定すると、後々返済額が急増するリスクがあります。
住宅ローンの借り換えは同じ銀行でもできる?
同じ銀行でも借り換えは可能であり、これを「金利引き下げ交渉」と呼びます。金融機関では、近年、既存のローン契約者からの金利引き下げの相談に応じることが増えています。
同じ銀行での借り換えは、他の銀行に借り換える場合に発生する諸費用が抑えられる場合があります。また、書類や審査の一部が省略され、他の金融機関に比べて手続きが簡単な場合も少なくありません。
ただし、同じ銀行であっても、他の銀行の借り換え金利と比較することでより良い条件を引き出せる可能性があるので、他の金融機関との比較検討を怠らないようにしましょう。
住宅ローンの借り換えはいつから可能?
住宅ローンの借り換えは、基本的にはいつでも可能です。ただし、借り換えを行う適切なタイミングは、いくつかの条件を満たしたときが最適とされています。
- 残りの返済期間が10年以上あるとき
- 住宅ローン残高が1,000万円以上あるとき
- 借り換え前後の金利差が1%以上あるとき
上記の条件を満たしていると、借り換えの適切なタイミングといえます。
住宅ローンの借り換えはデメリットを理解して適切なタイミングで
住宅ローンの借り換えを行うことで、総返済額が減少することは少なくありません。ただし、数十万円の諸費用がかかることや、変動金利に変更する場合は金利変動リスクが生じるなどのデメリットがあります。
住宅ローンの借り換えを検討する場合は、それぞれのメリットとデメリットを吟味することが重要です。
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